組織の生産性を最大化する「モチベーションマネジメント」
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「モチベーションマネジメント」で、外的要因ではなく内発的なやる気を引き出す

モチベーションとは、人間の行動を喚起し、方向づける内的要因のことで、「動機づけ」ともいわれています。私たちが何か行動を始めるとき、続けるとき、やめるとき、そのすべてにモチベーションは関わっています。そして組織においては、メンバー一人一人のモチベーションを高めることが、組織の生産性を最大化するためには非常に有用です。この考え方が「モチベーションマネジメント」です。

組織で働くうえでのモチベーションについて、詳しく考えてみましょう。作家のダニエル・ピンクは著書『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』のなかで、モチベーションを3つに分けて説明しています。

モチベーション1.0…生存や安心にもとづく動機づけ

モチベーション2.0…アメとムチに駆り立てられる動機づけ

モチベーション3.0…人の内面から湧き出る意欲にもとづく動機づけ

「モチベーション1.0」の「生存や安心にもとづく動機づけ」とは、食べないと生きていけないから働こう、というやる気のことです。「モチベーション2.0」の「アメとムチに駆り立てられる動機づけ」は、成果を挙げればよい給料がもらえるけれど、怠けていたら給料は下がってしまう。だからがんばろう、というもの。「モチベーション1.0」も「モチベーション2.0」も、どちらも外的要因によって動機づけられるものです。

そして、3つめの「モチベーション3.0」の「人の内面から湧き出る意欲にもとづく動機づけ」こそが、現在の社会で活躍できる知識創造型人材のやる気の源泉であると、同氏は主張しています。「モチベーションマネジメント」では、この「モチベーション3.0」を高めることが重要となります。

同著によると「モチベーション3.0」では、人の内発的な動機づけについて「自律性」「熟達」「目的」の3つの概念で説明しています。

1つめの「自律性」の定義は、「自由に好きなように仕事をすること」。その自由には、以下の4つの視点があります。

1. Task(課題):何に取り組むか?

2. Time(時間):いつ取り組むか?

3. Technique(手段):どのように取り組むか?

4.Team(チーム):だれと取り組むか?

たとえば、就業時間の使い方やタスク、プロジェクトの進め方、チームの意思決定などにおいて自由度を与えることで、メンバーに自律性が生まれ、動機づけに有効に働きます。

2つめの概念である「熟達」は、メンバーの「上達したい、成長したいという欲求」が動機づけにつながることを意味します。日々の業務や、個々人の中長期的なキャリアプランのために、必要なスキルや経験などを得るための後押しをすることで、モチベーションを引き上げることができます。

3つめの概念である「目的」には、以下の3つの視点があります。

1. 目標:社会的な意義などをはっきりと目標として示す

2. 言葉:魂を揺さぶる言葉で明確に表現する

3. 指針:目標に向けて行動すべき指針を示す

自分の仕事はいったい何のために行うものなのかを正しく理解し、納得して仕事に取り組んでもらうことで、やる気を引き出します。

このように「モチベーション3.0」の考えでは、「自律性」「熟達」「目的」という3つの概念によって、人は内発的に動機づけられ、成果を発揮していくとしています。

 

「モチベーション3.0」実現のカギは、短期的スパンで評価する成果主義からの脱却

「モチベーションマネジメント」では「モチベーション3.0」が重要であることはわかりました。しかし、ビジネスパーソンの声に耳を傾けると、モチベーションの理想と現実のあいだにギャップがあることがわかります。

雑誌「PRESIDENT」(2010年5月3日号)に掲載された「働きがいのある会社」調査によると、「あなたが働くモチベーションは何ですか」という問いに対して、全体の54%が「給料」と回答。多くのビジネスパーソンが、アメとムチによる「モチベーション2.0」で動機づけられていることがわかります。一方、「モチベーション3.0」にあたる「成長の実感」や「仕事の面白さ」を得ている人の割合は、役員・経営者層を除くと30%程度にとどまりました。

働くモチベーションが「お金」である人が圧倒的に多いのは、いったいなぜでしょうか。その理由の一つに、「成果主義の導入の影響」が考えられます。

成果主義を導入した企業は、そのほとんどが短期的なスパンで評価を行っています。なぜなら、長期的なプロジェクトの評価自体ができない(わからない)からです。さらに、不確実性の高いこの時代、長期的なプロジェクトは、進行中にそのプロジェクト自体の必要性がなくなってしまう可能性すらあります。そうなると、評価が悪くなる、もしくはゼロ評価となってしまい、報酬に大きな影響を与えてしまうといったこともあるでしょう。

短期的なスパンで見る成果主義のもとでは、社員は命じられた仕事や、成果を見込める、いまできることの延長線上の仕事にしか取り組まないようになりがちです。したがって、仕事そのものの面白さよりも、お金が働くモチベーションになるのです。

お金がもらえるからやる気が出るのではなく、自社で働くことや仕事自体に魅力を感じて内発的にやる気を出してもらう。人事部門によるモチベーションマネジメントの取り組み次第で、組織の生産性は大きく変わることでしょう。そしてそれが、会社の盛衰にも大きく関わってくるのです。

初出『HRトレンドハンドブック』(HR総研)

須東朋広(株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員/HR総研 客員研究員)

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

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