組織の壁をどう越える?「バウンダリー・スパニング・リーダーシップ」とは
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厳しい競争環境にある現代、どの企業も工夫と努力を積み重ね、経営や業務の推進、効率化を図っていますが、そこに大きく立ちはだかるのが、ときに部門間の連携の妨げとなる「組織の壁」です。競争環境を生き抜くため、また、新たな価値を創造するために、多くの企業が組織の壁を越えようと苦慮しています。組織の壁を越えるために近年、注目を集めているヒューマンスキル「バウンダリー・スパニング・リーダーシップ(boundary spanning leadership)」についてご紹介します。

バウンダリー・スパニングとは「壁を越える」こと

バウンダリー・スパニング・リーダーシップについて詳しく述べる前に、まず「バウンダリー・スパニング」を整理しておきましょう。バウンダリー・スパニングとは、「壁を越える」といった意味を持つ、主に経営組織論において議論が展開されてきた「組織の壁」に関する概念です。その議論は、経営学者で「近代組織論の祖」といわれるチェスター・バーナードが「組織を人間の集合体ではなく協働システムと見なし、そこには従業員や投資家だけではなく、顧客も含めるべきである」という表現で、組織の壁を取り払ったシームレスな組織体系を主張したことに始まります。そもそも「組織の壁を何とするか」という論争は下火になっていますが、近年、「組織の壁を越える」というバウンダリー・スパニングについては再び関心が寄せられています。

 

その背景は、冒頭で示したように、企業が厳しい競争を生き抜くため、新たな価値を創造するために、組織モデルの変更を余儀なくされていることが挙げられます。そこで、「壁ない組織」が注目を集めるようになったのです。

「組織の壁を越え価値を創造する」には、複数の組織に価値を還元できるリーダーシップを持つ人材が不可欠

「壁のない組織」という表現をはじめて用いたのは、「伝説の経営者」と呼ばれるジャック・ウェルチ氏であるといわれています。ウェルチ氏はGEのCEOを務めていた1990年に「1990年代のわれわれの夢は、壁のない会社である」と述べ、「内部でわれわれお互いを引き離し、外部でわれわれをいろいろな主要外部支援者から引き離している“壁”を取り除く」ことを目標に掲げて経営を行いました。

 

ウェルチ氏の取り組み以降、特にIT産業を中心に「壁のない組織づくり」が急速に普及していきます。「壁のない組織づくり」は、経営環境の不確実性に対処する目的で始まりましたが、近年は新たなイノベーションの創発を促す組織モデルとして注目され、その動きが加速しています。そうした動きの一つが「オープンイノベーション」です。オープンイノベーションとは、自社だけでなく外部のアイデアや技術などを巻き込んで新しい価値を創造する動きのこと。

 

しかし、組織モデルの変革がイノベーション創発に直結するかといえば、決してそうではありません。そこには、組織の壁を越えて新たな価値を創造し、複数の組織にその価値を還元できるスキルを持つ人材が不可欠となるでしょう。そうした人材に求められるスキルを「バウンダリー・スパニング・リーダーシップ」と定義しています。

「組織の壁を越え価値を創造する」ための5つのステップを知る

ここからは、バウンダリー・スパニング・リーダーシップによって組織の壁を越え、新たな価値を創造する際の5つのステップをご紹介します。

 

ステップ1

  • 既存組織の枠組みから一歩踏み出して、越境地に「点」を打つ。

ステップ2

  • 最初に踏み出した越境地に安住することなく、越境先に新たな「点」を打つ。複数の「点」が1本の「線」となる状態を目指す。

ステップ3

  • 線上に存在する専門家が直接つながり、無数の「線」が織りなす「面」を形成する。

ステップ4

  • 既存組織外で形成された「面」と既存組織との融合を図り、より大きな集合知をつくり出す。

ステップ5

  • 多面的に結ばれた既存組織内外のネットワークからプロジェクトに応じて最適な組織を編成し、異質な専門知が結合して新たな価値が創造される。

組織の越境体験をもつ人材を増やす

上記5つのステップを通して、組織間のコラボレーションを推進し、新たな価値を創造するために必要となるのがバウンダリー・スパニング・リーダーシップと呼ばれるスキルです。バウンダリー・スパニング・リーダーシップによる価値創造は、組織を越境した個人の経験に由来します。誰もが最初からこのスキルをもつわけでも、身につけてすぐに駆使できるわけでもありません。オープンイノベーションの創発を期待するならば、組織を越えた「ダブルワーク」や「プロジェクトベースの取り組み」といった多くの越境体験が有効でしょう。

 

初出『HRトレンドハンドブック』(HR総研)

須東朋広(インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員/HR総研 客員研究員)

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

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