元米国P&G会田秀和氏が語る「経営を変える、攻めの人事へ」―必要なのはリーダーの危機感と新しい成功モデル
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元P&G(ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー)米国本社の組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント、会田秀和氏による「経営を変える、攻めの人事へ」と題した本連載(全14回)。第2回は「必要なのはリーダーの危機感と新しい成功モデル」というテーマでお送りします。

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第1回】危機感をもって変革すれば、日本を再生できる

必要なのはリーダーの危機感と新しい成功モデル

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日本が今、成長・成熟の段階を過ぎ、衰退へとさしかかっているのは第1回でお話ししたとおりです。

それでは、日本再生の変革を行うには何が必要なのでしょうか? まず、変革を起こすには勇気を持って奮い立つことが必要であり、そのためには前回お伝えした危機感が重要になります。

あなたの会社の社長・役員はどれだけ危機感を持っているでしょうか? 今の大企業の経営陣の多くはサラリーマンになってしまっています。リーダーとしての危機感、覚悟が足りません。人と組織を改革すべき人事もそうです。会社を救うために立ち上がらなければならないという危機感、覚悟を持った人事がどれだけいるでしょうか。変革には、危機感と覚悟を持ち、大胆な決断や行動ができるリーダーシップというものが必要なのです。

さらにもうひとつ必要なのは、新しい成功モデルです。私たちは過去に素晴らしい成功を収めてきたがゆえに、そのやり方を壊すことが非常に難しくなっています。しかし歴史を見れば、これまで日本人は明治期にも第二次大戦後にもそれをやってのけたのです。今でもやる気があればできるはずです。

品質とコスト抑制で世界を席巻したのは過去の話

1950年代、海外では日本の製品は安くてすぐ壊れると笑われていました。そこで日本は、アメリカから品質管理の専門家であるW・エドワーズ・デミングを招き、「TQM(Total Quality Management)」を取り入れました。これによって製品の品質を素晴らしいものにすると同時にコストを抑えることに成功。日本製品は世界を席巻しました。

しかし今、この成功モデルは新興国のものです。私たちはこの過去のモデルを壊し、新しい成功モデルとは何かを考えなければなりません。それを一緒に考えて、もう一度世界に強い日本を発信していこうと呼びかけたいのです。

日本の土壌に根ざした素晴らしい感性・道徳観・組織力・開発力があれば、世界に通用するものを生み出すような新しい成功モデルを作ることは可能です。私はASEAN地域や韓国、中国など、長きにわたってアジアで仕事をしましたが、日本ほどハイレベルな組織力やモラルを持つ国はないと断言できます。

日本企業は人事のリーダーシップによって再生する

私は、変革をリードするのは経営陣ではなく人事部門であると考えています。人や組織を動かすのは人事の仕事そのものだからです。人事を担う人たちが変革をリードするには、その役割・使命を見直し、新しい役割を定義して、使命を達成するために必要な新しい専門知識を習得しなければなりません。

また、人事はより深くビジネスを理解することが重要です。これからの人事は、まずビジネスマンでなければなりません。市場で何が起こっているか、ビジネスの戦略は何かを理解しなければ、会社が必要とする人事の戦略を立案することができないからです。

人材を育てることも人事の重要な役割ですが、そこで今もっとも大切なのは、マネージャーを育てることではなくリーダーを育てることです(もちろん、マネージャーの育成も企業にとって必要であることは言うまでもありません)。

マネージャーは枠組みの中で仕事をし、リーダーはそれを壊して作りなおす

マネージャーが枠組みの中で仕事をする人であるのに対して、リーダーはその枠組みを壊し、新しい枠組みを作っていく人です。こういう破壊と創造を断行するリーダーがいないために、日本は今苦しんでいます。古い枠組みを壊す人がいません。壊そうとすると、よってたかってその動きを封じ込めてしまいます。

しかし、変革には古い組織や文化を壊し、新しいものを作っていくリーダーが不可欠であり、人事はそういうリーダーを育てなければなりません。そして戦後の成功モデルを壊し、日本の伝統の下に新しい競争力のある組織モデルを打ち立てる必要があります。

これを可能にするためには、人事がその新しい役割と使命を理解し、変革をリードしていかなければならないのです。

(つづく)

<<【第1回】危機感をもって変革すれば、日本を再生できる

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第3回】経営に参画し、変革をリードする新しい人事の役割

 

【著者プロフィール】

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表

会田秀和氏

写真_会田氏

ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール・オブ・ビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&Gフィリピンの改革、P&GジャパンとP&Gコリアのグローバル化、P&Gグレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)も務める。著書に『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

初出『経営を変える、攻めの人事へ』(HR総研) 編集:HRレビュー編集部

 

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