元米国P&G会田秀和氏が語る「経営を変える、攻めの人事へ」―経営に参画し、変革をリードする新しい人事の役割
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元P&G(ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー)米国本社の組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント、会田秀和氏による「経営を変える、攻めの人事へ」と題した本連載(全14回)。第3回は「経営に参画し、変革をリードする新しい人事の役割」というテーマでお送りします。

>>第1回「危機感をもって変革すれば、日本を再生できる」

>>第2回「必要なのはリーダーの危機感と新しい成功モデル」

経営に参画し、変革をリードする新しい人事の役割

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 古いタイプの人事は「人」にだけ注力しがちで、HRサービスの提供や従業員の擁護といったオペレーションが人事の役割だと考えています。もちろんこうしたことも必要ですが、それだけでは人事の役割の半分しか果たしていません。これからの人事には、戦略の領域におけるビジネスパートナー、変革の推進者といった役割も求められます。

 それでは、ビジネスパートナー、変革の推進者の役割とはどのようなものでしょうか。それは次のように、大きく4つに分けられます。

1.ラインと協力して業績向上に必要な「組織能力」を構築する

 従来の人事は、人の働き方など、とかく人ばかり見てきました。しかし、これからの人事が取り組まなければならないのは、ビジネスで勝つための「組織能力」をつくることです。グローバルな競争に勝てる組織をどのようにつくるか、そのためにラインといかに協力するかが重要になります。

2.戦略実現に必要な「組織文化」の形成と管理をリードする

 ここでいう「組織文化」とは、組織としてどのような行動をとるか、どのようなことが実践されているかということです。「文化」「風土」というと、日本人は曖昧なものをイメージがちですが、自分たちがどのように行動しているかを考えれば明確になります。それが「組織文化」です。戦略の実現には「組織文化」の形成と管理が不可欠であり、人事はそれをリードしなければいけません。

3.画期的な成果を出すために必要な強い組織づくりに貢献する

 人事はビジネスにおいて成果を出すため、人についてだけでなく、組織についても考えなければなりません。グローバル競争に勝つための強い組織をいかにつくるかを考えることも人事の使命です。

4.従業員の貢献を最大化する人事制度、仕組み、方針を打ち立てる

 従業員が力を最大限発揮して、会社に貢献できるような人事制度や仕組み、方針を策定します。今の日本企業は、古い人事制度、仕組みが障害になっているため、従業員の力を十分に使っていないといえます。

 

 この4つすべてを人事の使命として取り組んでいかなければなりません。そのためには考え方を変える必要があります。「人事=人」の発想で「人」のことだけに注力していては使命を果たせません。

 人事は会社と従業員、両方に価値を提供しなければなりません。バランスの取れた人事は、賃金制度や職場環境、キャリア形成といった「人」に対する貢献だけでなく、コスト削減や生産性向上など、会社にも価値を提供しなければならないのです。

 私はP&Gでコスト削減、生産性の向上に極めて多くの時間を費やしました。意識改革や人事サービスといった「人」に対する価値だけ提供していたのでは、経営者に相手にされないからです。ビジネスの領域で明快な成果を出さなければ、人事は存在感を示すことができません。意識改革も人事サービスも大切ですが、日本企業の人事はさらにもう3段くらい階段を上がり、人事の新しい貢献というものを真剣に考える必要があると思います。

日本の変革を妨げているもの

 1999年から2006年にかけてP&Gジャパンは大胆な変革を断行し、グローバルな競争力のある企業に生まれ変わりました。この変革について、日本ではよく「P&Gだから、外資だからできた」といわれます。その裏には「日本の企業で変革は難しい。できなくてもしかたない」という言い訳が隠れています。

 また「変革の成功率は13%くらい、ほとんどの変革は失敗する」という声もよく耳にします。私は日本での変革の成功率はもっと低く、実際は4~5%くらいだと思うのですが、これも変革ができないことへの言い訳になっています。日本企業で変革が成功しないのは、日本での変革が難しいからではなく、変革というものに対する考え方が根本から間違っているからだと思います。

今日本に必要なのは、組織モデルを根本から見直す破壊的な変革

 たとえば「経営陣は変革に関心がない。だからボトムアップで変革を進めている」とよくいわれています。こんな愚かなことをしていたら、変革が成功するわけありません。経営トップ以下、全社が緊密に連携しなければ、変革は実現しないからです。今の日本に必要なのは部分的な変革ではなく、組織モデルを根本から見直す破壊的な変革(Breakthrough Change)です。

本気で変革したいなら、成功例から学ぶこと

 また、日本企業では「改革担当者はつぶされる」のだそうです。あるビジネス誌の編集者によると、変革に失敗するとその推進者が責任を取らされてキャリアを閉ざされるとのこと。日本ではよくあることなのでしょうが、こんなことをしていたら、誰も変革など本気でやろうと思わなくなります。

 「忙しくて変革に手が回らない」などという人たちもいますが、そんなことをいっていたら、会社にもその人たちにも将来はありません。変革しなければ沈んでいくだけです。「変革したくても、やり方がわからない」という声も聞きます。たしかに日本には変革を理解している人は少ないです。多くの人がまちがったことばかり教えています。本気で変革したいなら、成功例から学ぶことです。

 

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第4回】P&Gの変革を成功させた7つの鍵」

 

【著者プロフィール】

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表

会田秀和氏

写真_会田氏

ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール・オブ・ビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&Gフィリピンの改革、P&GジャパンとP&Gコリアのグローバル化、P&Gグレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)も務める。著書に『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

初出『経営を変える、攻めの人事へ』(HR総研) 編集:HRレビュー編集部

 

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