元米国P&G会田秀和氏が語る「経営を変える、攻めの人事へ」―P&Gの変革を成功させた7つの鍵
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元P&G(ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー)米国本社の組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント、会田秀和氏による「経営を変える、攻めの人事へ」と題した本連載(全14回)。第4回は「P&Gの変革を成功させた7つの鍵」というテーマでお送りします。

>>第1回「危機感をもって変革すれば、日本を再生できる」

>>第2回「必要なのはリーダーの危機感と新しい成功モデル」

>>第3回「経営に参画し、変革をリードする新しい人事の役割」

 

P&Gの変革を成功させた7つの鍵

それではP&Gがどのような変革を行ったのかを説明しましょう。この変革の成功には7つのキーポイントがあります。

1.変革はビジネス戦略を軸として展開する

変革においては戦略が極めて重要になります。この戦略は「人事戦略」ではなく、「ビジネス戦略」のことです。このビジネス戦略を軸として展開しなければ変革は成功しません。「意識の改革をやりましょう」「ダイバーシティを推進しましょう」というのはビジネス戦略ではありません。会社が何を達成するのか、どこで戦うか、どうやって勝つか、そこで勝つにはどういう能力が必要か。これがビジネス戦略です。私たち人事もそこから入っていかなければなりません。ビジネスで勝つために戦略はあり、人事に関してもそこから考えなければならないのです。

2.経営幹部が変革を主導する

経営幹部が主導しなければ変革は成功しません。ビジネスで勝つために会社を、事業を、組織を変えるには、ボトムアップのやり方では日本に必要な本質的な改革は不可能であると断言します。日本の企業はそのことがわかっていません。しかし、心配は無用です。経営幹部さえしっかり変革への舵を切れば、日本の企業は一気に変わります。元々トップダウンで組織的に動く文化が日本にはあるからです。私はアメリカ、中国、フィリピン、ヨーロッパなどいろいろなところで変革を主導しましたが、日本での変革が一番やりやすかったです。条件さえ整えば日本での変革は容易です。そしてポイントさえ押さえれば、その変革は素晴らしい成果を生み出すことでしょう。

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3.変革を遂行する理由と利益について明確な説明を行う

変革を起こすにはまず幹部による話し合いが必要です。経営幹部が変革に向けて一つになり、意思を統一しなければ、会社を動かすことはできません。さらに従業員とも会話し、納得させる必要があります。なぜビジネスの改革が必要なのか、そこからどのような利益が会社と従業員にもたらされるのかを説明し、会話を通じて変革の必要性を浸透させていく必要があります。元々日本人は理性的な民族です。ちゃんと説明して納得すれば変わります。明治時代も第二次大戦後もそうでしたし、私たちの中には武士道、大和魂があります。だから今も変わることができます。そういう力が日本人にはあるのです。日本の労働者は、世界一のクオリティーを持っています。きちんと説明し、会話し、納得させ、変革へ一丸となって突き進めば、世界で勝てる会社へと生まれ変われるのです。

4.期待する目標と変革結果を数値化し、明確な責任の所在を確立する

変革というと、ともすれば理念や戦略ばかりが先に立ち、めざす目標を明確に数値化できていない企業が多いようです。たとえばシェアや売り上げをどれだけ伸ばそうとしているか、利益率や生産性、従業員の満足度をどのようにしていくかを明確に数値化し、その結果を可視化することで、各担当リーダーの責任を問うことができます。

リーダーはともすればビジネスだけを考えがちですが、会社を成功に導くには、ビジネスと組織を切り離すことはできません。組織があるからビジネスができるのです。戦略を達成するのは組織であり人材なのです。両者を切り離さず、目標を数値として設定し、リーダーの責任を明確化すれば、目標は達成されるはずです。

5.変革途中の効果の測定と中間評価を行う

ビジネスを推進するときには通常、3カ月ごと、6カ月ごとにレビューを行い、効果をチェックしますが、変革でもこれをやることが大切です。達成できないところはリーダーに責任を取らせるのです。責任を取らせないのでは変革がうまくいくはずがありません。日本の企業はこれをやらないから変革が進まないのです。変革の成果と途中経過をレビューしないということは、それが大切ではないということを意味します。

6.変革の結果をラインの成績評価に反映させる

変革は経営陣だけで行うものではありません。ラインが変革によって変わり、成果を出すかどうかですべてが決まります。だから変革の結果はラインの成績評価に反映されなければなりませんし、成果が出なければラインをなんとかしなければなりません。変革がうまくいっていないのに現場に行かない経営者は失格です。

7.変革の達成に立ちはだかる障害を大胆に排除する

たとえば変革に反対する人、妨害する人がいる場合はどうするべきでしょうか。日本では事を荒立てるのを恐れ、うやむやにしがちですが、それでは変革などできるわけがありません。

私は1999年にフィリピンから日本に来たとき、当時P&Gジャパンの社長だったマクドナルド氏(後のP&Gの会長)と、彼が達成したいことについてじっくり話し合いました。どういうビジョン、戦略で戦っていくか、それを推進してくれる幹部は誰で、妨害している人は誰で、どういう入れ替えをしなければならないかを明らかにしました。そして8カ月で8割の幹部を入れ替えました。変革には常にこういうことが必要なのです。本当に変革したいなら、妥協の余地はありません。

「難しくても正しいことをやる勇気を持て、それがリーダーである」と、私はP&Gで教わりました。「易しくて間違ったことをやるのではなく、難しくても正しいことをやれ」と。これが変革においてとても重要なことなのです。

 

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第5回】変革に必要なてこ入れ

 

【著者プロフィール】

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表

会田秀和氏

写真_会田氏

ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール・オブ・ビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G 本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&G フィリピンの改革、P&G ジャパンとP&G コリアのグローバル化、P&G グレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)。著書に『P&G 流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

 

初出『経営を変える、攻めの人事へ』(HR総研) 編集:HRレビュー編集部

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