元米国P&G会田秀和氏が語る「経営を変える、攻めの人事へ」―P&Gが抱えていた問題
Pocket
Share on LinkedIn

元P&G(ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー)米国本社の組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント、会田秀和氏による「経営を変える、攻めの人事へ」と題した本連載(全14回)。第6回は「P&Gが抱えていた問題」というテーマでお送りします。

>>「経営を変える、攻めの人事へ」連載記事一覧はこちら

P&Gが抱えていた問題

変革を開始する前にP&Gジャパンが抱えていた問題を見てみましょう。業績は、80年代半ばから90年代初めにかけて右肩上がりに伸びて、それから5年間の停滞期があり、やがて衰退期がやってきて業績が下がり出していました。

右肩上がりの時期、P&Gは値引きやセールスプロモーションなどを行いながら、日本市場でライバルと戦っていました。それが環境にそぐわなくなってきて業績が下降してきたわけです。右肩上がりの時期に有効だった戦略はすでに陳腐化しているため、新しい戦略に基づく変革が必要になりました。それに気づいてアクションを起こすのがリーダーの役割です。

_D059892

陳腐化されたままの戦略

変革を始めるに当たり、この停滞と衰退の理由を根底から分析した結果、さまざまな要因が見えてきました。

まず、陳腐化された戦略があり、バブル経済の崩壊があり、競争の激化がありました。そして、新しい戦略の打ち出しや経営幹部の交代、P&Gアジアの立ち上げ、化粧品ブランド「MAXFACTOR」の買収・統合といったことがあり、マネジメントの目が実際のビジネスから離れてしまったということも要因のひとつだったのです。

これらの要因から、当時P&Gジャパンが抱えていた課題や問題が見えてきました。まず、陳腐化された戦略、新商品開発と導入能力の欠如、低い利益率。さらには、戦略能力の欠如、非効率・非生産的な組織文化、戦略に合わない古い人事制度などです。

どのようにして勝つのか。Howを示す事業戦略

これらを踏まえて、どのような変革を行うか、それによっていかに勝つかという「事業戦略」を立案しました。「経営戦略」は、何を達成するか、どこで戦うか、どうやって勝つか、どういう能力が必要かの4つから成り立っていますが、以下はそのうちの事業戦略、つまり、どうやって勝つかという戦略です。次の6つにまとめました。

変革に向けて立案された6つの「事業戦略」

1.絶え間ない高品質の新商品の導入(イノベーション)

販促や値引きではなく、イノベーション、すなわち質の高い新商品を絶え間なく導入していくことで勝っていく。

2.卓越した実践力

競争に勝つためには同時に複数のイノベーションを行い、複数の新商品を生み出し、導入していかなければならない。そのためには卓越した実践力が必要になる。

3.消費者への競争力のある価値の提供

競争に勝つための戦略的な価格設定を行う。

4.コストの削減

競争力のある価格を実現するために不可欠なコスト削減を行う。

5.戦略的な顧客と共に成長し勝利する

大きな成長性がある分野にフォーカスし、その顧客が求めるより良い商品を提供しながら、P&Gも成長していく。それによって競合他社に勝つ。

6.戦略を実践するために必要な組織と能力の構築

この戦略を実戦するために必要な組織を作り、人材を教育・採用し、組織として能力を発揮する。

事業で何を達成するのか。Whatを示すビジョン

次に、この戦略に基づいたビジョンを策定しました。ビジョンというのは現実離れした理想や理念のことではなく、現実の事業において何を達成するかを指すものです。これは次の4点に集約されます。

戦略に基づくビジョン

・競合他社のどこよりも速い成長と高い利益率

・魅力ある商品の開発とP&Gならではのブランド確立のために、消費者の認知度・理解度をナンバーワンにする

・商品カテゴリーにおけるナンバーワンの生産性

・これらを実現する社員の満足度向上

 

このビジョンを達成するために、人事は改革に参画し、組織に介入していくのです。

ここで改めて確認しておきますが、新しい戦略を受け入れるということは、変わる決意をしたということであります。戦略は単なる言葉ではなく、必ず実行しなければなりませんし、そこに策定されている結果は必ず出さなければなりません。それが戦略というものなのです。

 

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第7回】P&Gジャパンの変革における人事戦略とその実践

 

【著者プロフィール】

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表

会田秀和氏

写真_会田氏

ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール・オブ・ビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&Gフィリピンの改革、P&GジャパンとP&Gコリアのグローバル化、P&Gグレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)も務める。著書に『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

 

初出『経営を変える、攻めの人事へ』(HR総研) 編集:HRレビュー編集部

「人材獲得競争の勝ち方~会社の未来に差をつける新時代の採用ノウハウ~」を無料でプレゼント中!
ctabanner

人事戦略は経営戦略である、という考え方のもと、母集団形成、決定率の向上、面接官の目線合わせの方法など、攻めの採用戦略に不可欠な考え方・手法・先進事例をご紹介ぜひご覧ください

Pocket
Share on LinkedIn