元米国P&G会田秀和氏が語る「経営を変える、攻めの人事へ」―リーダーの育成には特別な仕組みがいる
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元P&G(ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー)米国本社の組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント、会田秀和氏による「経営を変える、攻めの人事へ」と題した本連載(全14回)。第10回は「リーダーの育成には特別な仕組みがいる」というテーマでお送りします。

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ダイレクト・リクルーティングの採用成功事例

リーダーの育成には特別な仕組みがいる

P&Gジャパンにおける変革では、将来のリーダー育成にも力を注ぎました。変革を起こすまでのP&Gジャパンの組織は外国人に依存する傾向があり、上層部はほぼ外国人が占めていました。そこで、日本人のリーダーをつくるために、P&Gがグローバルで実施している「Top Talent制度」というリーダー育成制度を日本にも導入しました。

一般社員と異なる育成メニューとキャリア管理を実施する「Top Talent制度」

「Top Talent制度」とは、入社1年をめやすに将来のリーダー候補として選出された人材を対象に、リーダーに必要な育成を行う制度のこと。入社後の早い段階から将来のリーダー候補を選別し、重点的に育成することを目的にスタートしました。部長に昇進してから将来のトップ候補として育て始めるのでは遅すぎるのです。

P&Gでは、入社前の採用の段階から「候補者が将来リーダーになれるか」の観点も加味して人材を見極めています。私は1991年からの数年間、マーケティング部門の人事として、シカゴ大、ハーバード大などで採用活動を行いました。そのとき当時の会長から言われたのは、「あなたの仕事は将来の課長クラスの人材の採用ではなく、将来のゼネラル・マネージャー、会社を担う本部長クラスの採用である」というものでした。P&Gでは、この観点で採用した人材を1年間かけてじっくりと見極めて、リーダー候補を選出していきます。

選出の条件は、2階級上へ昇進可能と評価された人材であること。評価成績がトップ10%の社員のなかから行われ、そのうち女性が30%を占めるよう配慮されています。これは会社の女性社員比率と同じ水準です。評価項目は、リーダーシップ力、問題解決力、英語力、専門能力。これらの項目を軸に評価を行って選ばれたトップタレントには、一般社員とは異なる育成メニューが用意され、キャリア管理を実施しながらリーダーへと育てます。具体的には、次のようなことを行っています。

・当人にとって大きな挑戦となる仕事を与える
・特別なメンターを設定し的確な助言、指導を行う
・経営幹部と接する機会を設けて、経営幹部が仕事ぶりや成長を把握できるようにする
・短いサイクルでジョブローテーションを行い、幅広い分野の経験を持たせる

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短期的なサイクルで多様な経験を積む

私もリーダー候補として早くから育成されました。ある工場に赴任したとき、工場長から「ヒデ、あなたは将来リーダーになれるからがんばれ」と言われたのを今でも覚えています。工場に勤務していた間も、シンシナティ市の本社を頻繁に訪れ、生産本部のトップをはじめ、いろいろな人に会っては見解を聞く機会を与えられました。

リーダー候補のキャリアは、一つの部署の在籍期間が一般社員よりかなり短く、大体2~2年半ほどで配置転換されます。私の場合、工場2年、セールス3年、マーケティング3年、ロジスティクスの立ち上げ2年、フィリピン2年などです。大きな組織変革を行った日本には8年と特別長くとどまり、その後は中国を経てシンシナティ市の本社へと戻りました。

6カ月に一度のキャリア面談でリーダーの資質を引き出す

リーダー候補のキャリア面談は6カ月に一度行われ、目指す仕事は何か、将来どこまでいけるか、次の役割は何か、自分の強みと弱みは何で、強みをさらに強くし、弱みを克服するにはどうしたらよいのか、誰がメンターになるかなどを話し合います。リーダー候補として育てられた私自身の経験は、P&Gジャパンでの「Top Talent制度」導入に大いに生かすことができました。

グローバルリーダーを生んだ「5×5計画」

P&Gジャパンの「Top Talent制度」には、日本だけでなく海外でも活躍できるグローバルリーダーを育てる目的も組み込みました。「5×5計画」という、5年後に5人の日本人をゼネラル・マネージャーにするという計画を制度として定めて運用した結果、日本人のなかからP&Gジャパンの社長が誕生。この人物はもともと英語が話せなかったのですが、アメリカ、カナダ、韓国、シンガポールなど世界各地の拠点で経験を積ませたことで言葉の壁がなくなり、P&Gジャパンの社長に就任しただけでなく、グローバルでのP&Gのリーダーの一人へと成長したのです。

>>「経営を変える、攻めの人事へ」――【第11回】「グローバル能力」をいかに開発するか

 

【著者プロフィール】

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表

会田秀和氏

写真_会田氏

ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール・オブ・ビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&Gフィリピンの改革、P&GジャパンとP&Gコリアのグローバル化、P&Gグレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)も務める。著書に『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

初出『経営を変える、攻めの人事へ』(HR総研) 編集:HRレビュー編集部

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