リーダー候補を見極める「インシデントプロセス面接」とは
Pocket
Share on LinkedIn

さまざまな面接手法を理解し、使い分けできる人事・採用担当者は少ない

一口に「面接」といっても、さまざまな手法があり、それぞれ異なる特徴があります。たとえば、潜在能力の見極めを重視した「コンピテンシー面接」、リーダーシップを見る「インシデントプロセス面接」、論理的思考力や業務理解度をチェックする「プレゼンテーション面接」。この他にも「ディベート面接」「ロールプレイング面接」「心理面接」などがあります。

採用面接では、募集ポジションの特徴や候補者の特性、選考フローなどに応じて、適切な面接手法を使い分けることが大切です。しかし、「どのような候補者に、どのような面接手法が適切なのか」を正しく理解して使い分けできる人事担当者は多くないでしょう。そこでHRレビューでは複数回にわたり、特徴的な面接手法の概要と効果を解説していきます。初回は、多くの企業が難しいと悩む、リーダー候補・マネジメント人材の採用で役立つ「インシデントプロセス面接」を取り上げます。

「インシデントプロセス面接」はリーダー候補・マネジメント人材の採用に適している

1950年、マサチューセッツ工科大学のポール・ピゴーズ教授によって考案されたリーダー人材の教育研修などで使われる事例研究法の一つが「インシデントプロセス法」です。誕生から半世紀以上たちますが、近年は能力向上の訓練だけでなく、教育現場の教師のカウンセリングなどにも利用されている伝統的な手法です。

この「インシデントプロセス法」を面接に応用したのが「インシデントプロセス面接」です。「インシデントプロセス面接」は、面接官が提示した問題のあるインシデント(事例)に対し、候補者が質問を重ねてそのインシデントの問題点を洗い出し、問題の元となる課題(原因)を突き止めます。その課題に対して解決策を提示する、というのが大まかな流れです。面接官は候補者の一連の思考プロセスを通して、候補者の対応力やビジネススキルを見極め、リーダーやマネジメント候補にふさわしいかを判断します。

 

インシデントプロセス面接の手順

  • STEP1
    面接官が候補者(被面接者)に、あるインシデント(事例)を提示する
  • STEP2
    候補者が面接官への質問によってその事例の背景となっている事実・情報を集める
  • STEP3
    候補者が事実・情報を元に問題点を洗い出し、解決すべき課題を絞り込む
  • STEP4
    候補者が課題の解決策を提示する
  • STEP5
    面接官が面接の振り返りを行う

この面接で重要なのは、候補者が「必要な情報を収集し、問題が起きる元となっている課題の解決策を考え出す過程」を見ることです。候補者がどのように考えて、質問を重ねていくのか。そこに着目し、候補者の情報収集能力や洞察力、仮説思考力、課題解決能力などを見極めるのです。このような問題発見・課題解決のアプローチはビジネス経験の浅い若手人材には難しいため、「インシデントプロセス面接」はある程度ビジネス経験や実績のあるリーダー候補・マネジメント人材の採用面接に適した面接手法といえます。

面接事例から「インシデントプロセス面接」の手法を学ぶ

ここからは面接事例を挙げて、「インシデントプロセス面接」の進め方を5つのSTEPに沿って解説します。

候補者に提示する事例は下記の【事例A】のように、募集ポジションにおいて現実に起きた「課題解決で苦労した事例」を挙げることをおすすめします。面接官の面接準備にかかる負担が少なく済みますし、候補者の質問にも的確に答えやすくなります。また、候補者が適切な課題解決法へたどり着くことができれば、入社後に活躍する姿をイメージしやすいといったメリットもあります。
 

STEP1
面接官が候補者(被面接者)に、あるインシデント(事例)を提示する

【事例A】営業マネージャー候補の募集面接の場合

「5人のチームメンバーのなかでB氏1人だけが売り上げ目標を達成できませんでした。この事実に対して、自由に質問し、課題とその解決策を考えてください」

この事例Aでは、B氏だけ売り上げ目標を達成できなかった理由(問題点)を探り、その問題が起きている原因(課題)は何かを突き止めて、どうしたら売り上げ目標を達成できるようになるか、その解決策を候補者に考えてもらいます。

候補者にはSTEP2で面接官に質問をしてもらいますが、その際お互いに以下のことに留意します。留意点については、質問時間に入る前に面接官から説明しましょう。

候補者の留意点

  • 簡潔に、具体的に質問する
  • 面接官の意見、感想を求めるような質問はしない

面接官の留意点

  • 客観的事実を簡潔に回答する
  • 質問からそれたことは回答しない
  • 原則として、推測、意見は述べない
  • もし推測を答える場合、その根拠となる事実や理由も説明する
     

STEP2
候補者が面接官への質問によってその事例の背景となっている事実・情報を集める

事例Aを受けて候補者は、面接官から事実を聞き出し問題点を特定していきます。仮説思考のプロセスが身についた候補者なら「B氏自身の営業スキルに問題があるのではないか」「チームの育成方法に問題があるのではないか」「B氏の担当する市場に問題があるのではないか」といった見当をつけて、的確な質問をしてくるでしょう。質問力のあるなしが、問題発見能力、情報整理能力と密接に絡んでいます。候補者がリーダー、マネージャー候補としてふさわしい基礎能力を備えているかをSTEP2で明らかにできるのです。

【STEP2でわかる候補者の能力】質問力、問題発見能力、情報整理能力、仮説思考力
 

STEP3
候補者が事実・情報を元に問題点を洗い出し、解決すべき課題を絞り込む

5つのステップのなかで、特にこのSTEP3がもっとも重要です。候補者は、質問によって洗い出した問題点を分析し、本当に解決すべき問題を特定し、それが起きる原因(課題)を突き止めます。事例Aではたとえば、「B氏自身の営業スキルに問題があるのではないか」という見当をつけて重ねた質問によって、「B氏は顧客視点で踏み込んだ商談ができていない」「他のメンバーと比べて、顧客企業への訪問前準備が不足している」といった問題点が明らかになったとしましょう。それらの問題の背景をつきつめると、実は「B氏の自社サービスへの共感の欠如」が根本的な課題だったということが特定できるのです。

このSTEP3を通して、候補者が問題と課題の違いを理解し、いかにしてロジカルに課題発見までの思考プロセスをたどるかを垣間見ることができるのです。

【STEP3でわかる候補者の能力】課題発見能力、分析力、ロジカルシンキング力
 

STEP4
候補者が課題の解決策を提示する

STEP4では、発見した課題の解決策とその理由を候補者に発表してもらいます。STEP3で見いだした「B氏の自社サービスへの共感の欠如」という課題の解決策として、候補者が何らかのソリューションを提示してきたとします。そのソリューションと理由が期待通りの内容であったか否かは大きな問題ではありません。ソリューションの提示に至るまでの思考プロセスがロジカルであるかを中心に見てください。

【STEP4でわかる候補者の能力】ロジカルシンキング力、判断力、課題解決能力
 

STEP5
面接官が面接の振り返りを行う

最後にSTEP5として、質問力、情報整理能力、仮説思考力、ロジカルシンキング力、課題解決能力などの視点で、候補者の能力を総合的に評価します。
 

まとめ 

「インシデントプロセス」の手法を面接に応用する場合に得られるメリットは以下の通りです。

  • ビジネス現場の身近な問題事例を通して、候補者に質問をさせることでその能力を見極められる
  • 具体的には、質問力、情報整理能力、仮説思考力、ロジカルシンキング力、課題解決能力などを見極められる
  • ビジネス経験の浅い若手人材にはこの課題解決アプローチは難しいため、リーダー候補・マネジメント人材の面接に向いている

※面接のトリセツVol.2では、コンピテンシー面接を取り上げます。

 
Pocket
Share on LinkedIn