【採用学 I】採用学研究所 服部泰宏准教授 ☓ ビズリーチ|良い企業・成長する企業の採用活動の特徴と企業属性の関係
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採用学の第一人者である横浜国立大学の服部准教授がリーダーを務める採用学研究所(運営:株式会社ビジネスリサーチラボ)とビズリーチが、日本の採用活動動向の調査を目的として共同研究を実施。ただいま無料で第1弾「採用学I 成長企業における採用活動の特徴」の研究レポートをダウンロードしていただけます。

「採用学」とは、企業の採用活動に関する課題に科学的観点からアプローチし、採用活動の効率化を支援して社会に貢献することを目的とした、課題解決志向で実践的な学問です。

今回は前回に引き続き、研究レポートのなかから第四章「『良い企業・成長する企業』の採用活動の特徴と企業属性の関係」と題して研究結果の一部を抜粋してご紹介します。レポートの全文は文末のリンクから無料でダウンロードすることが可能です。ぜひご覧ください。

分析方法および定義

3章では、「良い企業・成長する企業」の採用活動の特徴を「事業戦略の明確さ」「人材要件の明確さ」「採用 と戦略の接合」「組織の活性化」「成長性」の観点から分析 (注1) した結果を述べました。 本章ではさらに、各企業における人員構成や求められるリーダーシップが採用活動に与える影響を分析しました。 「良い企業・成長する企業」と「採用活動」の関係性に影響を与える企業の特徴や性質は「調整変数」と呼び、 以下の4つを指標として用います。

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図表1 企業属性の定義

注1 数式で表現するとY= α X_1+ β X_2+ γ (X_1×X_2)+ εとなります。Y は企業がとる採用活動を表し、X_1は「良い企業・成長する企業かどうか」を、αは「X_1 がY の採用活動にどの程度影響力を持つか」を表します。同様に、X_2は「どのような企業か(企業属性)」を、βは「X_2 がY の採用活動にどの程度影響力を持つか」を表します。ここで、X_1×X_2は「良い企業・成長する企業かどうか」さらに「どのような企業か(企業属性)」の2つを組み合わせたものになっており、γは「2つの組み合わせが採用活動にどの程度影響力を持つか」を表しています。なお、「2.2 人材採用に積極的な経営層の特徴」以降の分析結果はαとα+β+γの違いに着目しています。

 

「戦略と企業属性の関係」の特徴

まず、採用活動に対する経営層の関与の大きさですが、3章では主に以下のような結果が得られました。

• 組織が活性化されている企業ほど、経営層は採用したい人材との面接、会食などに時間を使うことを惜しまない

• 組織が活性化されている企業ほど、人材要件の決定に経営層が積極的に関わっている

• 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、人材要件の決定に経営層が積極的に関わっている

• 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、マネジメント人材の充実が戦略の優先事項の上位3 つに入っている

さらに分析した結果、企業の特徴に左右されず、これらの傾向は各企業に共通して見られました。つまり、求められ る人材の質・量や、求められるリーダーシップにかかわらず、「良い企業・成長する企業」は経営層が積極的に採用 活動に関与しているといえます。これはいかなる企業でも経営層の役割の大きさは変わらないものであり、企業経営や 人材獲得競争におけるその役割の重要性と普遍性を意味していると考えられます。

「カルチャーと企業属性の関係」の特徴

次に、採用活動に対する組織運営の姿勢、現場スタッフ・マネージャーの積極的な関与といった組織のカルチャー という観点から見た「良い企業・成長する企業」の採用活動の特徴と、企業属性の関係を見ていきます。こちらにつ いては、3章では主に以下のような結果が得られました。

1 人材要件の明確な企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的である

2 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしている

3 組織が活性化されている企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしている

4 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的である

次項から、さらに企業属性で特徴的だった点を述べます。

1 人材要件の明確な企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的である

3章では、人材要件の明確な企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的な傾向があるという 結果が得られましたが、さらに分析した結果、ビジョナリーなリーダーシップが求められる企業と、そうでない企業にお いて顕著な差が見られました(図表2)。

分析の結果、ビジョナリーなリーダーシップが求められる企業は、自社が採用したい人材像を社内で共有できてお り、現場のスタッフやマネージャーも何が求められているのかを明確に認識していると考えられます。

優秀な人材を採用するために、現場スタッフ・マネージャーの協力が不可欠であることは本レポートにおいて幾度も 説明していますが、1章では、日本企業の多くは人事部門が中心となって採用活動を進めていることが明らかになりました。したがって、優秀な人材を採用するためには、採用担当者は自社の将来や目標を社内で語り、現場スタッフ・マネージャーを巻き込んだ採用活動を推進していく必要があるといえます。採用担当者が現場スタッフ・マネージャー に人材採用の重要性を語ることで、現場スタッフやマネージャーは何を求められているのかを理解し、採用活動に協 力する必要性を認識できると考えられます。

ビジョナリーなリーダーシップを発揮することによる効果は、本章の別の分析結果からも見ることができました。この点については後述します。

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図表2 人材要件が明確で、現場のスタッフ・マネージャーが面談・面接に協力的な企業の特徴

2 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしている

3章では、採用と戦略の接合度が高い企業においては、優秀な人材を面接官として活用する傾向が見られました が、そのなかでも企業全体における中途入社者比率の高低において差が見られました(図表3)。

左側が白抜きになっているグラフは、中途入社者の比率が高くない企業を表しており、採用と戦略の接合が高い企 業が必ずしも優秀な人材を面接官にアサインしているわけではないということが分かります。これは、新卒・生え抜き の人材による文化が強く影響していると考えられます。

他方、中途入社者比率が高い企業はプラスの値を示しており、採用と戦略の接合度が高く、さらに中途入社者比率 が高い企業では、優秀な人材を面接官にアサインする傾向があることが分かります。

中途採用においては、新卒採用と異なりポテンシャルだけではなくその時点での能力も多分に求められます。応募者 の持つ能力をより適切に評価・判断しなければならないため、その能力を面接で見極めることができる人材をアサイン する必要があり、その傾向が結果に表れたと考えられます。

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図表3 採用と戦略が接合していて、優秀な人材を面接官にアサインしている企業の特徴

3 組織が活性化されている企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしている

3章では、組織が活性化されている企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしているという傾向が見られましたが、 そうした企業のなかでも優秀な人材が不足している企業においては、その傾向が弱いことが分かりました(図表4)。

優秀な人材ほど通常業務が忙しく、面接の時間の確保が難しくなっていると考えられます。そのため、面接のために 優秀な人材の時間を確保することに対して現場スタッフやマネージャーの理解を得ることが難しく、人事としてはアサインを強く依頼できなくなっている可能性があります。

しかし3章で述べたように、面接官に優秀な人材をアサインすることは、求職者の入社意向を上げるのに効果的で す。つまり、社内の優秀な人材を採用の最前線に出せないことで、将来活躍してくれるかもしれない応募者を逃してし まう恐れもあります。そうすると、優秀な人材の確保が難しくなるといった悪循環に陥ってしまいます。

この悪循環から抜けるためには、現場に採用の重要性を伝え、協力を得なければなりませんが、これは採用担当者 だけでは解決できない場合もあります。それでは、どのような企業風土が必要になるのか、次項に説明する分析結果 から考察します。

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図表4 組織が活性化していて、優秀な人材を面接官にアサインしている企業の特徴

4 採用と戦略の接合がなされている企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的である

3章では、採用と戦略の接合度の高い企業においては、現場のスタッフ・マネージャーが面談・面接に協力的な傾向 がありました。このことから、人材採用が戦略上重要な事項ととらえられている企業においては、現場も含めて一丸となっ た採用活動を展開できていると考えられます。

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図表5 採用と戦略が接合されていて、現場のスタッフ・マネージャーが面談・面接に協力的な企業の特徴

前項で、優秀な人材が不足していると感じている企業は、面接に優秀な人材をアサインすることが難しくなって いると説明しましたが、この項の分析結果からは、経営目線を持ち、組織の変革を主導していくようなリーダーシッ プを強く求められる企業のなかでも、採用と戦略の接合がなされている企業ほど、現場スタッフやマネージャーのコ ミットメント・協力を強く得られていることが分かりました。

この結果は、優秀な人材を採用するために現場スタッフやマネージャーの協力を得るには、採用担当者が自社の将来を語り、現場スタッフやマネージャーが活発に意見を交換できる企業風土を浸透させていく必要があることを示唆しています。 しかし、図表5のとおり、ビジョナリーなリーダーシップをあまり求められない企業でも、採用と戦略の接合 度が高ければ現場スタッフ・マネージャーはある程度、協力的であることが分かります。

また「1 人材要件の明確な企業ほど、現場のスタッフやマネージャーが面談・面接に協力的である」において、人材要件が明確になっている企業においても、ビジョナリーなリーダーシップが求められる組織ほど、現場のスタッ フやマネージャーは面談・面接に協力的であるという結果が得られましたが、「ビジョナリーなリーダーシップを求めら れなければ、現場スタッフ・マネージャーを巻き込んだ採用努力は不要である」というものではありません。採用担当者が現場スタッフ・マネージャーの協力を得るためには、ビジョナリーなリーダーシップが必要であると考えられます。

業務プロセス①:「求職者の募集と企業属性の関係」の特徴

続いて、多くの求職者を引きつけるための業務プロセス上の工夫という観点から、3章の結果を深めます。こ ちらについては、3章では主に以下のような結果が得られました。本節ではさらに、企業属性で特徴的だった点を述べます。

• 成長性の高い企業ほど、欲しい人材には企業の方から積極的にアプローチする

• 成長性の高い企業ほど、常に新しい採用手段を模索し、取り入れている

3章において、成長性の高い企業ほど欲しい人材には能動的な採用活動を行っている傾向が見られましたが、本節 での分析の結果、ビジョナリーなリーダーシップを求められる企業ほど、その特徴は強いことが分かりました。ビジョナ リーなリーダーシップが求められる企業では、能動的な採用活動が企業経営の成功をも左右しうると考えられます。

他方で、ビジョナリーなリーダーシップを求められない企業では、そのような傾向は見られません。成長性の高い企 業のすべてが欲しい人材に能動的な採用活動を行っているわけではなく、ビジョンの実現に向けて積極的に人材にア プローチすることが企業の成否を左右しうると推察されます。

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図表6 成長性が高く、欲しい人材に積極的にアプローチしている企業の特徴

業務プロセス②:「採用活動の運用と企業属性の関係」の特徴

最後に、採用活動の柔軟さ、改善活動に関して、特にこうした取り組みが企業の成否に密接に関わる条件について 見ていきます。 3章では主に以下の結果が得られました。

• (a) 成長性の高い企業ほど、中途採用の給与水準を柔軟に運用している

• (b) 成長性の高い企業ほど、スカウトメールや求人情報は反応率を見ながら常に改善している

• (c) 事業戦略の明確な企業ほど、面談官・面接官にコミュニケーションの内容を記録させている

本節での分析の結果、(a) のみ、企業属性によって採用活動の特徴に違いが出ました。 対して、スカウトメールや求人情報の改善、あるいは面談官・面接官にコミュニケーション内容を記録させるといっ た具体的・基礎的な事項において企業属性による差が出なかったのは、これらが各企業で共通して重要であることを 示しています。いかなる企業も、こうした基本的な採用活動の改善は重要であると考えられます。

成長性の高い企業ほど、中途採用の給与水準を柔軟に運用している

成長性の高い企業に見られる傾向の一つとして、上述の(a)のとおり中途採用の給与水準を柔軟に運用していると いう点がありました。ここではさらに、トラディショナルなリーダーシップとの関係に着目しました(図表4-7)。

結果は、成長性の高い企業であっても、トラディショナルなリーダーシップを求められる企業では、中途採 用の給与水準は柔軟に運用されていませんでした。トラディショナルなリーダーシップを求められる、いわゆる 日本的な企業においては、給与水準を柔軟にするよりも、むしろ賃金カーブの維持や、コストの均一化の方 が成長に寄与しているといえます。

2 章において、欲しい人材に積極的にアプローチする企業は、給与水準を柔軟に運用している傾向が見られ ましたが、優秀な人材を採用するためには、時に柔軟な運用が求められます。現在は順調に成長していたとして も、硬直化した運用では将来を担う人材を逃してしまう危険もあります。

saiyogaku4_7図表7 成長性が高く、中途採用の給与水準を柔軟に運用している企業の特徴

4章まとめ

4章では、3章で分析した良い企業、もしくは成長する企業の採用活動の特徴がどのような企業属性で顕著になる かを分析しました。

■良い企業・成長する企業における採用活動と企業属性の関係

• 「良い企業・成長する企業」と「採用活動」の関係における「企業属性」による違いを分析すると、特に将 来や目標の達成に向かって周囲をリードする「ビジョナリーなリーダーシップ」、そして部下への気配りや雰囲 気づくりなどを重視する「トラディショナルなリーダーシップ」が幅広く、多くの変数に影響を与えていました。

• ビジョナリーなリーダーシップを求められる企業では、企業成長はより積極的な採用活動や現場スタッフ・マ ネージャーを巻き込んだ採用活動、給与水準や採用手法の柔軟さと密接に関わっていました。

• 一方で、トラディショナルなリーダーシップが求められる企業では、ビジョナリーなリーダーシップを求められ る企業よりも相対的に弱い関係だけが見られました。

• しかし、イノベーションを導くような人材の獲得には新規性・柔軟さが有効な一方で、伝統的な日本的人材 (現場に密接に関わり、人間関係への配慮や会社との一体感を大事にする)の獲得においては、必ずしも柔 軟な採用活動が有効であるとは言い切れません。

• 自社が「良い企業・成長する企業」になるための最適な採用手法を考える場合、企業の持つ性格・特性 に合致した選択を行うことが必要不可欠であると考えられます。なかでも、要求されるリーダーシップの性質 が、イノベーション推進・ビジョナリーなものか、日本の伝統的・トラディショナルなものかどうかが、きわめて重要だといえます。

 

(採用学Iの研究レポートから一部抜粋。全文は以下のPDFをご参照ください)

 

全文PDFの無料ダウンロードはこちらから

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横浜国立大学服部泰宏研究室「採用学プロジェクト」とビズリーチが、日本の採用活動動向の調査を目的として共同研究を実施。上述の分析を含む、採用学 I 「成長企業における採用活動の特徴」全文をいまなら無料でプレゼント中!

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