人材業界ざっくり100年史【中途採用市場編】
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今回の記事は、ルーセントドアーズ株式会社代表取締役の黒田真行氏により寄稿いただきました。
黒田氏は1988年リクルート入社以降、約30年、転職支援サービスに関わっています。 リクナビNEXT編集長、リクルートエージェント企画責任者、リクルートドクターズキャリア取締役を歴任した後、 2014年9月ルーセントドアーズ株式会社を設立。
2014年12月、35歳以上向けの転職支援サービス「CareerRelease40」をスタートし、人工知能を活用してミドルの転職可能性の最大化に取り組んでいます。

Indeed、LinkedIn、Wantedlyなどの新興勢力群、リクナビNEXTやen、マイナビなどの既存転職サイト群、リクルートエージェントやインテリジェンスをはじめとした人材紹介群、さらに激しく市場参入を狙うHRテクノロジーや転職系クチコミサービスなど、メディアとプラットフォームの分散化の止まらない人材業界は、今後どこへ向かうのか?

その未来を予測するための材料として、今回は市場のメインストリームの変遷を軸に、人材業界の100年史を整理しておきたいと思います。

※ここでは「中途採用の正社員採用市場」に限定し、新卒や派遣領域やアルバイト・パート領域、組織人事コンサルティングや採用業務代行業界などはスコープ外としています。また、時流の読み方には、かなり個人的見解や経験バイアスが混入しております。あしからずご了承ください。


ペーパーメディアが君臨した100年


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1880年代に新聞広告の一分野として生まれた求人広告は、ほんの15年前まで100年以上にわたって、ペーパーメディア主体で成長を続けてきました。

新聞広告の多くは「営業社員募集、委細面談」という感じの3行広告で、途中、1950年代にテレビ・ラジオの登場はあったものの、自動車や住宅、食品などの商品販促広告との広告費用格差が大きかったため、電波メディアの影響は受けず、むしろ1970年代に登場した就職専門情報誌(「就職情報」発行:リクルート)の登場で、新聞広告から徐々に求人専門情報誌に市場が移行する歴史をたどってきました。

求人情報誌は有料の市販誌形態をとっていたため、募集要項の詳細など、比較検討できる情報の充実化が一気に進み、一方で広告件数の増加に伴いコピーライターやデザインの斬新さで広告反響数を競う表現技術も進化します。
求人広告クリエイターが東京コピーライターズクラブの受賞の常連だった時代もあったくらいです。

1980年以降、バブル景気の影響もあり、情報誌はアルバイト専門や女性専門、技術者専門、技能・サービス職専門などに細分化し、さらに日本各地の地域限定の情報誌、折り込みチラシも次々に登場し、1990年代後半にペーパーメディア全盛期を迎えていきます。

求職者への情報流通が、書店や駅売店、コンビニエンスストアに限定されていて、求職者が数百円で情報誌を買うという時代はもはや歴史の風景ですね。

ただ、各メディアが利用者獲得を競い合って、電車の中吊り広告や新聞広告、予算がある時期にはテレビCMを打って激しく販促を行う状況は、今も引き継がれています。最近、転職サイト各社のテレビCMが激増しているのはご存じの通りです。
その流れを一気に変える地殻変動は、2000年前後に集中して起こりました。


【地殻変動その①】インターネットメディアの勃興


それまで、ニューメディア、マルチメディアと呼ばれていたITを活用した次世代社会が、1995年に一気にインターネットという言葉に席巻されました。
まだ、ヤフー(創業1996年)、グーグル(創業1998年)も生まれていません。

日本の中途採用市場では、リクルートが当時の情報誌「B-ing」のインターネット版としてスタートした「Digital B-ing」(現・リクナビNEXT)が生まれたのが1998年。

2003年ごろには情報誌の反響数をインターネットが追い抜くスピード感でした。ちなみに、この2000年初頭の一大変化として、求職者の登録情報のデータベースが構築され始め、ペーパーメディアでは見えなかった求職者情報の可視化による機能の変化も登場します。

リクナビCareer(現リクナビNEXT)では企業の人事担当者が、自社の求める求職者のレジュメに直接スカウトを送信できる機能利用が一気に加速しました。企業の代行で媒体側が1to1で口説くサービスと両立していましたが、企業がダイレクトにスカウトを送信する機能は情報精度が粗い(おとり的情報で応募を集める、など)ものも多く、求職者利益の保護のためにいったん2004年に停止し、リクルートではその後スカウト代行サービスが主流となりました。

業界内では、2010年ごろから企業が直接スカウト送信できるサービスが再び増え始め、現時点では第2の過渡期に入りつつあります。ただ、過去10年の人事機能の変化やアウトソーシングの隆盛、SNSの台頭なども相まって、求職者データベースを活用したダイレクトメール型のスカウトサービスは、2000年ごろとはまったく異なる様相を呈し始めています。

インターネットによる構造変化のさらなる詳細は、ここでは長くなりすぎるのでまた別の機会に。
ただ、こと日本国内のサービスに限定すると、2010年代初頭までのインターネット前期15年においては、「ペーパーメディアの置き換え」にとどまっていたと言ってもいいかもしれません。ビッグデータの活用やAIによって、インターネットの活用可能性が広がるのは、まさにこれからの10年だと考えています。


【地殻変動その②】有料職業紹介事業の規制緩和


もうひとつ、日本の中途採用市場において見逃せない21世紀以降の変化は、1999年の有料職業紹介事業の規制緩和です。
いわゆる人材紹介サービスは、源流をたぐると江戸時代から存在していたと言われますが、当時の対象業界や職種を見ると手工業の職工などが中心で、ホワイトカラーやエンジニアを中心とする現在の人材紹介の源流というよりは、現在の技術者派遣、業務請負業界に引き継がれている流れだと思われます。

現在の中途採用市場に人材紹介事業が大きくインパクトを与えるのは、1999年の職業安定法の改正に伴う、民間の有料職業紹介事業の原則自由化です。

人材紹介の取扱職種が、科学技術者と経営管理者に限定されていたものが、事実上解禁され、職業安定法の中で大きな役割を期待されることになったため、2000年以降現在まで(途中リーマンショックで一時的沈下はあるものの)、まさに階段を駆け上がる勢いで一大産業に成長していきました。

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さらに高額の前受金で行っていた課金形態も、成功報酬型に変化したことも加速の一因でした。
その結果、人材紹介業界は、参入する事業者と従事するコンサルタント数も激増し、求人広告情報誌が席巻していた中途採用市場の中で、あっという間に逆転するくらいの「売上シェア」を占めるまでに育っていきました。

まさに「国策に負けなし」の15年間です。しかし現時点では、ここにもIoTの流れが加速度的にサービスを変容させ、また実際に入社決定に至る「人数」も激増していく見込みです。一方で人材紹介におけるプレイヤーの激増とIT活用は、「理論年収の●%」という従来維持してきた単価下落の引き金にもなろうとしています。


注目の今後の流れは?


きわめて乱暴な100年史ですが、まずは今回は、中途採用市場の人材業界を取り巻く大きな流れを整理するというところで、次回につなぎたいと思います。

今後についてはっきり言えることは、もう日本国内の職業安定政策だけでは、市場をコントロールすることが難しくなるということだと思います。法の変化より急速に、サービス自体がグローバル化し、国境を越えたプラットフォームがすでに市場を変容させつつあるということです。

ながらく採用側起点にやや偏って成長してきた業界ですが、求職者起点のサービスの進化と市場の合理化・適正化が進化していく流れは変わらないと考えています。個人的見解が多い乱文ではありますが、業界内外の方からのご意見・アドバイスもお待ちしております。まずはご清聴ありがとうございました。


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