人事部門は個人と個人をつなぐファシリテーターであれ
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ファシリテーターとしての人事部門

人事部門は、採用、退職、組織編成と人事異動、人事考課、報酬設計と運用、教育・研修を通じて組織の活力を高めることを担っています。これらは非常に重要なことですが、「組織と権限の設計・運用」「個人の意欲・能力の向上」に焦点を置いた役割です。現実の組織は、陣形を整えて人材を配置するだけでは成果は保証されません。通常、そこから先は「現場の仕事」であり、組織の活性化は「マネジメント」「リーダーシップ」に委ねられるなどの説明で理解されてきました。しかし、人事部門の仕事はここまででよいのでしょうか。

今回は、新たな人事部門の役割として「関係性の質の向上」を強調したいと思います。そのために有効な方法のひとつが「ときには人事部門が現場の会議にファシリテーターとして直接介入する」という考え方です。従来の人事部門は社員個人をデータとして扱い、そのデータの変化を記録することに活動の中心を置いていました。しかし現実の職場は「個人と個人の関係性」のなかで変化し続けています。時には会議の意思決定の場面で「参加メンバーが保持している情報量や能力」だけでなく、「参加メンバーの間の関係性」が意思決定の品質に大きな影響を与える場合もあります。

たとえば、過去の成功体験が豊富な年長者のAさんと、最新の変化に鋭敏だが経験不足の若手メンバーであるBさんとの会議を想定すれば、Aさんが会議をリードしてBさんの意見や主張は反映されない傾向があります。また、技術力は低いが規模の大きな買収側のメンバーであるCさんと、技術力は高いが規模の小さな被買収側のメンバーであるDさんとの会議の場では、Cさんが優位に議事を進める可能性が高くなるでしょう。いずれのケースでも、競争環境よりも社内の力学が優先され、意思決定の品質を確保することは難しくなります。

このように、意思決定の品質の良し悪しを「現場の責任、リーダーシップの問題」としてかたづけるのではなく、人事部門が中立的な立場で「関係性の向上」を目的に直接介入することが有効です。その場合、人事が議長や司会者を務めるのがよいということではありません。「関係性」を高める研修を提供したり、「関係性」を高めるようなファシリテーターを派遣したりするなどの方法が考えられます。

人事または研修部門で働くプロのスキルのひとつとして、この「関係性の質」を向上させるファシリテーションに関わる知識とスキルを磨いておくことを推奨します。特に以下の3点について学ぶことが有用だと思います。

第1に、「認知と思考」に関して、TA(心理学を応用した交流分析)、MBTI(ユングの心理学に基礎を置く検査)、ビッグ・ファイブ(主要五因子性格検査)、DiSC分析、EQやEI(情動知能)などの考え方を知ることは有益でしょう。

第2に、中立的な立場で議論を整理するためのクリティカル・シンキングの基本手法を使用できることも大切です。

第3に、意見の優劣を戦わせる討議というよりも、対話を促進する質問法、参加者間の質問主体の会議の運営ができることも重要になります。

意思決定するのはあくまで現場ですが、利害関係の対立を前提にして駆け引きとしての妥協や強引な決定のリスクも目立ちます。その対策のためにも、中立的なプロのファシリテーターとして人事関連部門のメンバーが参画することは、筆者の経験からも有効であると考えています。

 

初出『HRトレンドハンドブック2013』(HR総合調査研究所、ProFuture株式会社)

藤岡長道(株式会社ワークハピネス チーフ・カタリスト/HR総合調査研究所 客員研究員)

 

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