雇用流動化の時代、人材流出を防ぐ「リテンション・マネジメント」導入を
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短期的には雇用情勢が上向いていること、中長期的には労働人口が減少するという見通しといったさまざまな要因から、国内外問わず雇用の流動化が進んでいます。雇用の流動化が進むということは、企業にとっては優秀な人材を獲得する機会が増えることにつながりますが、一方で、自社の優秀な人材が流出しかねないことも意味します。そこで近年、注目されている人事施策が「リテンション・マネジメント」です。

リテンション・マネジメントとは?

リテンションは、「保持」「継続」「引き留め」などを意味する言葉で、リテンション・マネジメントは、端的にいうと「人材の引き留め施策」のことです。リテンション・マネジメントを通じて労働環境を整える施策を打ち、優秀な人材を自社に引き止めることで、高い能力を発揮し続けてもらうことができます。欧米諸国では、すでに人事マネジメントのひとつの手法として広く認知されています。

リテンション・マネジメントで人材を定着させる

企業がリテンション・マネジメントに取り組むと、従業員と企業の双方にメリットがあります。従業員は、退職したいという考えが生じにくくなり、長期に渡って安定的にキャリアを形成しやすくなります。また企業側から見ると、人材の流出による事業成長の機会減少を防げるだけでなく、人材が定着して活躍することにより、社内にノウハウやナレッジが蓄積され、さらなる事業成長や新しい事業展開などが期待できます。

組織寄りの施策を行う日本企業、働く個人に焦点を当てるグローバル企業

では、リテンション・マネジメントでは実際に何を行えばいいか考えてみましょう。2011年に実施したリテンション・マネジメントに関する研究会の研究結果で、日本企業とグローバル企業の間で、リテンション・マネジメントに対する考え方に違いがあることがわかりました。

リテンション・マネジメントの効果的な施策として、日本企業は「適性配置」「公平な評価・報酬」「権限委譲」が重要であるという回答が多く見られた一方、グローバル企業は「社員の仕事の満足度向上」「マネージャー教育」を重視する声が多数でした。組織寄りの視点で施策を考えている日本企業に対して、リテンション・マネジメントに早くから取り組んでいるグローバル企業は働く個人に焦点を当てていることがわかります。

タスク処理型人材から知識創造型人材の確保へ

産業資本主義では、全員が一丸となってコツコツと利益を「積み上げていく」ビジネスモデルが主流のため、タスク処理型人材が重要でした。しかし、今日のような知識資本主義では、2割の人が8割の成果を「たたき出す」ビジネスモデルが主流であり、その2割にあたる優秀な人材「知識創造型人材」の確保こそが重要となります。この知識創造型人材の奪い合い、“ウォー・フォー・タレント”を嫌というほど経験しているグローバル企業の人事が、個に焦点を当てた人事施策に重点を置くのは当然といえるでしょう。

『ウォー・フォー・タレント』が予見した、人材育成競争の時代

“ウォー・フォー・タレント”と聞くと、「人材の獲得競争である」ととらえてしまいがちですが、人事の名著として知られる『ウォー・フォー・タレント』では、人材獲得と同等に人材育成も重要であることを説いています。

人材育成競争は戦略上の転換点であるという事実を、多くの企業が見逃している。これは今後のビジネスシーンを決定するほどの影響力を持つ。(中略)人材育成競争はすべての企業にとって大きな課題ではあるが、早い時期から積極的に取り組めば、競争での優位性を獲得する大きなチャンスにもなりうる。

このように、今後も企業が持続的に成長していくためには「人材の獲得」だけでなく、「人材の育成」にも積極的に取り組まなければならないのです。

常に学び、自己成長を促す機会を創出する企業文化を作る

知識創造型人材は常に学び、自己成長を促す機会や専門能力を高める機会を求めています。個に焦点を当ててリテンション・マネジメントについて考えるとき、知識創造型人材に難易度の高い仕事を与えることや、自己成長を促す人材育成システムが機能していることが、彼らを自社に引きつけて流出させない魅力的なインセンティブになります。人材の獲得、育成競争を勝ち抜くために、グローバル企業では知識創造型人材に選ばれる仕組みの構築を行っているのです。

日本企業の人事部門がこれからのリテンション・マネジメントについて考えるとき、これまでのように組織寄りの視点で制度の構築やその運用を行うだけでなく、働く個人、とくに知識創造型人材に焦点を当てることが重要です。個人の成長や能力向上に寄与する仕事を創造する企業文化を創ること、そして人材育成システムを構築することが、今後より重要となるのです。

 

初出『HRトレンドハンドブック』(HR総研)

須東朋広(インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員/HR総研 客員研究員)

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

 

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