人事は管理部門から戦略パートナーへ! 未来のあるべき人事のカタチを考える
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人事の役割は何か?

人事が果たすべき役割は多岐にわたります。この役割を簡潔に定義したものが、著書『MBAの人材戦略』などで知られる人事研究の世界的権威、デイビッド・ウルリッチ教授が提唱した4つの役割でしょう。今回はそれに基づき、現在の人事部が果たしている役割、そして今後人事部が果たすべき役割について見ていきます。

人事が果たすべき4つの役割

デイビッド・ウルリッチ教授が提唱した、人事が果たすべき4つの役割が、1.戦略パートナー(Strategic Partner)、2.人材管理のエキスパート(Administrative Expert)、3.従業員のチャンピオン(Employee Champion)、4.変革のエージェント(Change Agentです。それぞれの役割を説明したものが以下の図になります。

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[図1] 人事が果たすべき4つの役割

今回はこの4つの役割について現職の人事担当者にアンケートをとり、この中から自分が人事として果たしている役割に最も近いものを選んでもらいました。すると、企業規模別で比較した場合は大きな差異はないものの、業種別で比較した場合は大きな差が生まれる結果となりました。

人事としての役割は「管理」と「戦略」が30%超という結果に

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[図2] 人事部門として現在果たしている役割

今回のアンケートでは、全体の33%が「人材管理のエキスパート」を選択し、次いで「戦略パートナー」が31%でほぼ同じ割合となりました。3番目は「変革のエージェント」で25%となり、「従業員のチャンピオン」はわずか4%にとどまりました。

メーカー系と非メーカー系で人事が果たしている役割は異なる

人事が果たしている役割を企業規模別、業種別に見てみると、企業規模の大小では顕著な差異は認められなかった一方で、メーカー系企業と非メーカー系企業では大きな違いが見られました。メーカー系では「人材管理のエキスパート」(40%)と「戦略パートナー」(39%)が非メーカー系より10ポイントも高く、逆に非メーカー系は「変革のエージェント」(29%)において、メーカー系13%の2倍以上のスコアを記録しました。メーカー系と非メーカー系のそれぞれで人事が果たしている役割のアンケート結果をまとめたものが、以下の図です。

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[図3] 人事部門として現在果たしている役割(メーカー系企業)

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[図4] 人事部門として現在果たしている役割(非メーカー系企業)

「今後」の人事の役割については、53%が「戦略パートナー」を挙げており、過半数を占める結果となりました。続いて「変革のエージェント」が27%となり、「現在」果たしている役割で最も高かった「人材管理のエキスパート」は10%と低く、「従業員のチャンピオン」においては4%という結果が得られました。

なお、「現在」の役割では業種による大きな違いがありましたが、「今後」の役割では業種や企業規模による違いは認められませんでした。この結果から、業種や企業規模を問わず、人事担当者はビジネス戦略に沿った組織や制度を設計する力が必要であるという認識がうかがえます。

米国でも「人事=戦略人事を実行する部門」という認識が拡大中

人事を戦略パートナーと見なす動きは今後ますます活発化しそうです。ハーバード・ビジネス・スクールの元教授であり、世界的にも著名な経営アドバイザーであるラム・チャラン氏は、人事が戦略人事を実行する部門として成功を収めるために必要なこととして、以下のように主張しています。

  1. 給与や福利厚生などの管理業務を人事部から切り離し、経理部などに吸収させる
  2. 人事部は、リーダーシップを発揮してビジネスに大きなインパクトを与えられる分野に集中すべき
  3. そのためには人事部のトップが、経営企画やマーケティング、財務など、ビジネスの現場を経験している人材でなくてはならない

「人事部門から管理業務は切り離すべき」という考え方に反論も

ラム・チャラン氏は、戦略人事を実現する上で、人事部にビジネスの現場における豊富な経験を持つ人材を配置し、人事部の組織構造そのものを大きく転換すべきだと述べています。人事最高責任者など、人事部がリーダーシップを発揮して組織に大きな影響力を持つには、管理業務などから切り離すべきだというのが同氏の主張です。これに対し、デイビッド・ウルリッチ教授は「人事部の組織構造を変化させることが、そのままビジネスに付加価値を与えるとは言いがたい」とハーバード・ビジネス・レビューの論文で反論しています。

企業規模や経営状況にマッチする、最適な人事部門を考える

人事部門はどのような道をたどるべきか。その答えは企業規模や経営状況によって違ってくるといわざるを得ません。潤沢な資金を持ち、人材開発や組織強化に重点を置ける組織であれば、優秀な人材を厳選して採用し、さまざまな研修制度や福利厚生を整え、さらには最も優秀な人材(トップタレント)を人事最高責任者に据えるなどしても良いでしょう。

一方、限られた経営資源を用いて採用や教育を実施しなくてはならない組織であれば、採用、教育、福利厚生などの管理を限られたリソースでやり繰りする必要があります。「人材の採用要件は現場主導で設計してもらう」「面接回数を減らし、作業工数を削る」といった試行錯誤が求められるでしょう。

人事部門が果たすべき役割は、今後間違いなく拡大する

総じていえるのは、今後、人事の役割はあらゆる企業で広がり続けるということです。現役の人事担当者へのアンケートでも、「人事が果たす役割の重要性は今後どのようになるか」という問いに対して、「大いに高まる」という回答は22%、「高まる」は49%となりました。

この結果においても、業種や企業規模による違いは見られませんでした。多くの人事担当者が、経営戦略に即した人事戦略の立案・推進が強く求められる時代であることを肌で感じているのでしょう。管理のみを行うだけでは、人事としての存在価値を発揮できないといっても過言ではないかもしれません。

長期的にビジネスに貢献できる人事組織を作るために

ビジネスにおけるグローバル化が加速し、企業間競争が加熱する中で、今後の展望や必要な対策を即時に提供できる人事組織が強く求められています。現在、自分たちの人事部門が単なる管理部門になっていないか、企業や経営層の戦略パートナーとして機能しているかを見直すことで、あらためて人事として進むべき道や課題点が見えてくるかもしれません。人事は長期的にビジネスに貢献できるエキサイティングな仕事です。短期的な目標ではなく、長期的な視点に立って、組織の未来を作る人事という仕事に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

初出『HRプロ 人事白書2015』

編集:大城達矢(HRレビュー編集部)

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