組織を転換させる3つのパターン | タレント・アクイジションとは何か(後編)
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本シリーズでは、人材獲得競争の激化が叫ばれるなか、外資系企業を中心にその役割・組織を見かける機会が増えてきている「タレント・アクイジション(Talent Acquisition:タレント人材獲得)」について、海外の文献や事例をもとに、そもそもタレント・アクイジションとは何か、またこれからの採用組織のあり方や、担うべき役割についてご紹介しています。

これまで前編中編では、タレント・アクイジションの変遷や特徴についてお伝えしてきました。現在の採用業務の範囲や組織の役割と、タレント・アクイジションでは大きく異なる点があることを感じていただけたのではないでしょうか。業務範囲や役割が拡大すれば、もちろんそれを担う人材のスキル・能力も異なっていくため、多くの場合は現行の採用業務の延長線として進めていくのは難しいと考えられます。それでは、タレント・アクイジションを実施・実現するためには新たにどのような人材が必要で、組織はどのように構築する必要があるのでしょうか。

3回目となる今回は、「タレント・アクイジションを実施・実現していくためにはどうしたらよいのか」について、組織体制やキャリアの観点から解説します。


採用組織をタレント・アクイジション組織に変えるには

これまで、日本国内でもタレント・アクイジション組織への転換を試みた企業がいくつかありますが、それらの事例を踏まえると、進め方には大きく分けて次の3パターンがあります。

1.既存の採用組織には不足している知識・スキル・経験を持った人材を加える
2.タレント・アクイジションの経験者を外部から獲得し、組織デザインを変える
3.経営陣と連携しながら新たにタレント・アクイジション組織を立ち上げる

それぞれについて、具体的に解説していきます。

1. 既存の採用組織には不足している知識・スキル・経験を持った人材を加える

1つめは、既存の採用組織を生かしながら、必要な役割を持つ人材を加え、徐々にタレント・アクイジション組織としての体制を整えていく、ソフトランディング的なパターンです。

さまざまな試みが行われていますが、加えられることが多い人材は、営業のハイパフォーマーです。営業の業務は、口説く・獲得する力が必要となる採用の業務と似ており、採用力強化の推進力になりえます。また、研究・開発職やエグゼクティブクラスを採用するためのマネジメント経験者など、応募者や現場を理解した上で、自社に必要な要件や業務内容、中長期の戦略、会社の理念やビジョンについて対話ができる人材も、採用担当として非常に重要です。

2. タレント・アクイジションの経験者を外部から獲得し、組織デザインを変える

2つめは、タレント・アクイジションの経験者を、主に外資系企業から獲得し、その人材を起点に体制変更を行うパターンです。これは、組織デザインを一気に変更する、ハードランディング的パターンといえます。

新たに加わったタレント・アクイジション経験者は、採用組織の責任者として組織の変革を担う、あるいは、HRビジネスパートナー(HRBP)といわれる事業責任者にとっての人に関わる参謀として組織や事業の戦略に従いながら、人事組織全体の変革(HRトランスフォーメーション)や採用組織の変革を実現する役割を担います。

組織デザインを変え、定着させるには時間がかかるため、タレント・アクイジション経験者が採用の具体的な施策の策定に携わったり、直接採用業務を行ったりするなど、企業の状況に合わせた体制が取られます。

3. 経営陣と連携しながら新たにタレント・アクイジション組織を立ち上げる

最後は、主にベンチャー企業で見られるパターンです。ベンチャー企業は、人材獲得のスピードが企業の成長に大きく影響を与えるにもかかわらず、人材獲得が困難な場合がほとんどです。加えて、少ない人員・資源を活用しながら進めていかなければならないため、高い採用力が必要となります。

そのなかで、必要な人材を獲得するために立ち上げるべきなのは、「採用組織」ではなく「タレント・アクイジション組織」です。経営陣と密に連携し、どのような人材が今、そして今後、必要になるかを予測しながら進めます。そして、経営陣を動かし、社員が優秀な友人・知人を候補者として紹介するリファーラル採用といった活動を行っていくことになるでしょう。

また、以上のいずれのパターンにおいても、
・マーケティング、ブランディングを強化するために採用マーケティング担当を配置する
・採用プロセスと結果の分析を強化するためにデータサイエンティストを配置し、連携する
・タレントプールを構築するために、必要な人材をイベントやデータベースなどから見つけるソーシングを実施する
といった、採用力を強化する役割を担う人材も、徐々にですが増えてきています。

 

“採用のプロフェッショナル “としてキャリアの先に

これまでお伝えしてきたとおり、タレント・アクイジションには高度な専門性を要するため、ハイパフォーマーや専門職を採用組織に集める必要があります。しかし、考慮しなくてはならないのはその人材のキャリアです。採用組織への異動にともない、それまで培ってきたキャリアや専門性が途絶えてしまうのではないかという懸念を持つ人も少なくないでしょう。

現状、日本には採用のプロフェッショナルが少ないため広くは認識されていませんが、採用は事業を組み立て推進していくうえで最も重要であり、経営に直結するような仕事であるといえます。積極的に採用を担ってもらうために、採用のプロフェッショナルになることで、以下の2つをはじめとしたキャリアが開けていくと伝えることも大切です。

一つは、採用の専門家として事業レベルをより上げながら最終的にエグゼクティブレベルの採用を担うまで上り詰め、タレント・アクイジション組織を構築するキャリアです。実際アメリカにおいては、そのようなキャリアが存在します。PayScaleによれば、Senior Talent Acquisition Managerの平均年収は約100,000ドル(2017年3月時点)と、人事部長と比べても見劣りしません。

もう一つは、事業のリーダー、経営に携わるキャリアです。社内外の人材を調達し、その後の活躍を支援することは、事業側の立場に変わったとしても非常に大切な仕事です。したがって、経営資源として重要な、人材の獲得・定着・活躍に関わった人材として、経営に近い立場になることも考えられます。

このように、優秀な人材の獲得が、ハイパフォーマーだからこそ任せたい事業運営上重要な仕事の一つであり、採用の仕事を通じて、採用のプロフェッショナルとしてだけでなく、事業を担う人材としてかけがえのない経験も得られるのだと社内に伝えていくことも、タレント・アクイジション組織を構築するために重要な仕事の一つといえます。


ここまで、タレント・アクイジションの組織と、キャリアについてお伝えしてきました。次回は、「事例編」として実際にタレント・アクイジションを実践されているケースをご紹介します。

 

文:ビズリーチHR研究所 金澤元紀


<参考資料>
「HR Transformation―グローバル成長に向けた人事変革の方向性
第1回『HR Transformation』とは」, 山本紳也, jin-jour 2013.08.15,
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=59968

「日本企業のピープルアナリティクス 日立製作所の新卒採用改革」, 北崎茂、古川琢郎, ダイヤモンド・オンライン,
http://diamond.jp/articles/-/117217


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